神棚といえば、屋根をもつものがほとんどで、例外的に箱宮と呼ばれる屋根のないものに分類されます。
通常の屋根をもつ宮形は、扉の数で一社宮、三社宮、五社宮、七社宮などがあり、それぞれに通し屋根型と段違い屋根型に分けられるというのは、以前の記事でご紹介しました。
その中でも段違い屋根の五社宮を自宅に備えようと思ったのですが、ひとつ気に入らない点がありました。
一般的に販売されている段違い屋根の神棚は、段違いではあるものの、屋根の軒部分の長さは同じものが多いのです。
また、三社造り以上の扉を持つ神棚は、正面中央に階段があります。
これが、私には引っかかるのです。
神棚は、「神様の家」すなわち、社寺を模したものです。
社寺建築的に言えば、中央の主屋根は、向拝と呼ばれる全面に飛び出した形状です。
そして、その向拝を支える向拝柱が、他の柱よりも全面に配置されているのが通常です。
しかし、神棚というのは意外にも社寺を模したものというには、すこし違う造りになっています。
あえて簡略しているのでしょうが、もともと社寺建築を本業としていた私としては、「本物の社寺を模した神棚がほしい」と考えるようになりました。
ということで、無ければ作ればいい。 という発想で自作神棚造りにチャレンジしてみることにしたのです。
自作神棚の設計
神棚を自作するといっても、まず設計から始めなければなりません。
設計するにあたって、私が望むものは段違い屋根の五社造り、そして向拝を持つ形式です。
まずは、簡易的に設計してみて、大方の寸法を決めました。
正面だけの設計図ですが、なかなか良い感じかと。
もちろん御神札がちゃんと納まるように、寸法図にも御神札を書きました。
高級神棚に習って、脇障子も付けています。
自作神棚のこだわった点
せっかく自作するのですから、他人が持っていない本格的な造りにしたいと思い、設計時点で結構こだわっています。
まず、一般の神棚では欄干(らんかん)は、擬宝珠(ぎぼし)のものが多く、組み高欄(くみこうらん)の場合でも、材料の切り出しと組みやすさから簡略し、直線的なものになっています。
これを外側をハネる形状の刎ね高欄(はねこうらん)にしました。
高欄にはさらにこだわっています。
通常、高欄の地覆(じぶく)部分は、一本の直線の材料を用います。
しかし、自作神棚の高欄には水切り(みずきり)と呼ばれる繰りをつけました。
さて、市販の神棚の一番気に入らなかった点、屋根部分ですが、これにも強いこだわりをみせました。
屋根の軒先部分も一般の神棚では一直線ですよね。
これも、社寺建築同様に軒反り(のきぞり)を加えます。
さすがに本格的に軒反りをつけるとなると、垂木や木負、茅負などの形状も変わるので、ここは少し簡略して葺地のみの反りとします。
さらに、通常は段違いのみの屋根ですが、向拝と向拝柱をもたせるようにします。
これには、正面からだけでなく、横から見た図面も必要になってきますので、側面図を書き足します。
一般的には直線的な屋根ですが、せっかく向拝をもたせるのですから、社寺同様の技法で破風に反りを加えます。
さらに、向拝柱と本柱をつなぐハリには海老型の形状をもつ海老虹梁としています。
設計段階で苦労した点
自作神棚を設計するにあたって、本格的なものを目指しつつも、やはり神棚ですから、御神札を納めることはもちろん、御神札の出し入れがしやすいようにする必要があります。
また、向拝を設けたせいで、全面に広いスペースが必要となってくるので、あえて後部は簡略せざるをえませんでした。
本格的な社寺を造るなら、それはもう模型ですよね。
これはあくまで神棚なので、機能面を重視することに注意しました。
これらの設計図はJW_CADというソフトを使用しています。
機械図面などは、AUTO CADを使用するのが一般的ですが、建築の設計では、よくこのJW_CADが使用されます。
また、JW_CADはフリーソフトなので無料で使用できます。
神棚の自作を考えているのであれば、無料で使えるJW_CADを使ってみてはいかがでしょうか。
JW_CADは以下のリンクからダウンロードできます。
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さて、次回からは、いよいよ材料の切り出しとパーツ造りです。
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