日本の民家を覗いてみると、一般的な神棚の他に、台所に安置される小ぶりな神棚を見かけることがあります。
ここでお祀りしているのは、天照大御神様や氏神様ではありません。
台所を守護する荒神様です。
荒神様は、基本的に他の神様とは別の神棚でお祀りする必要があります。
専用の神棚から台所を守る荒神様とは、いったいどのような神様なのでしょう。
荒神様の意味は広い
台所の神様と言われる荒神様ですが、民間信仰としての特徴を持ち、その意味は広く使われています。
荒神様は、三宝荒神とも呼ばれます。
しかし、こちらは神仏習合において火の神様と竈の神様の信仰に、仏教と修験道の信仰が混ざったものとなります。
仏教においては、「仏・法・僧」の三宝を守護するものです。
神道においては、竈三柱大神(かまどみはしらのおおかみ)として祀られます。
三柱は竈の神様である奥津比古命(おきつひこのみこと)と奥津比売命(おきつひめのみこと)、火の神様である火産霊命(ほむすびのみこと)を指します。
人が煮炊きを通して食事をすることから、竈神様は生命力との縁が深い神様です。
竈の火に宿るため、火伏せの力もあります。
また、火の神様は、穢れや災いを浄化する力を持ちます。
この二つの力に直結する場所が台所なのです。
そのため、荒神様は台所を守護する神様として、専用の神棚にお祀りされるようになったと考えられています。
台所の入り口に掛かる暖簾(のれん)も、神域を示す注連縄(しめなわ)が変化したものだと言われています。
現代に置いても、台所の役割は変わりません。
火を使用して食事を作り、火に対する用心を必要とします。
荒神様をお祀りして見守っていただければ安心ですね。
荒神様をお参りするには
荒神様は民間信仰の特徴があるため、神道や仏教とはお祀りの作法が異なるようです。
神棚は、台所の清浄な場所を選び、目線よりも高い位置にお祀りします。
神棚の扉は普段は閉めてお祀りしますが、年1回新しい御尊影と交換する時のみ開扉します。
毎朝、米、お塩、お水、お酒など、準備するお供え物は、基本的に一般の神棚と同じですが、米については朝炊いたご飯をお供えします。
このご飯については、朝ご飯を炊かれる家庭であればよいのですが、朝炊かれないご家庭では、洗米でもかまいません。
また、榊立てに通常の榊に松を三本挿した「荒神松」と呼ばれる榊を飾ります。
お供え物を捧げ、ロウソクに火を灯します。
ここでの相違点は、お線香を立てて拝礼する習わしがあることです。
本数については、特に決まってはいないようです。
拝礼の作法も少し特殊で、一礼をした後、三拍手をします。
拝礼中は、般若心経に加え、荒神御真言「オン・ケンバヤ・ケンバヤ・ソワカ」を七回唱えるとされています。
最後に一礼をして、拝礼を終わらせます。
また、荒神様のしめ縄はすこしカタチが違います。