「神宮大麻(じんぐうたいま)」なるものをご存知でしょうか。
文字だけを見ていると、不穏なイメージが沸いてきそうですね。
しかし、想像したものではありませんし、植物ですらありません。
神棚を見てみると、中央に鎮座する御神札の存在に気がつくことと思われます。
これこそが、「神宮大麻」です。
お伊勢参りで有名な伊勢神宮の御神札、簡単に言うと「お札」を意味する言葉です。
「大麻」は、「おおぬさ」と呼ばれ、お祓に使用する神具のことを指します。
「神宮大麻」は、この神具を由来に持ち、多くの変遷を経て和紙で包んだお札の形になったと言われています。
では、なぜ「神宮大麻」が神棚の中央に祀られているのでしょうか。
その意味について、考えてみたいと思います。
天照大御神が宿る
日本は、八百万(やおよろず)の神の国と言われるほど、多くの神々を祀っています。
数多の神々の中でも、最も尊いとされているのが、太陽を神格化した天照大御神です。
天皇陛下および皇室の祖先神でもありますね。
それぞれの地域には、氏神様が存在してお守りしてくれていますが、天照大御神は総氏神として日本全土をお守りしてくれていると考えられています。
その天照大御神を祭神としているのが伊勢神宮なのです。
御神札は祭神の力を宿すものですので、「神宮大麻」を通して天照大御神をお祀りし、見守っていただいているということに繋がります。
神宮大麻を授かるには
この有り難い「神宮大麻」を、買ってみたいと思うこともあるでしょう。
ここで注意が必要なのは、「神宮大麻」に限らず、御神札やお守りなどに対しては「買う」という表現を使ってはいけないということです。
正しくは、「受ける」「授かる」と表現します。
その昔、伊勢神宮の御師(おんし)と呼ばれる方々が、伊勢神宮のへの信仰を広めるため、全国を巡って頒布していたからと言われています。
当時は、御祓大麻(おはらいたいま)と呼ばれ、私たちが授かる神宮大麻とは形が異なっていたようです。
御祓大麻は箱に収められ、「御祓箱(おはらいばこ)」と呼ばれていました。
毎年古いものを新しいものに取り替えることから、現在の「御祓箱」の語源ともなっています。
さて、御師の制度は、明治4年に廃止されたため、現在は神社本庁を通して全国に配られています。
そのため、現在の「神宮大麻」は、日本のほぼ全ての神社で受けることが可能です。
これは「国民が、朝夕神宮に敬拝できるように」という、明治時代の天皇の思し召しによるものとされています。